どうもどうも。アナログです。こんにちは。
今日もまた「New Age of Death Metal」と題して2010年代を振り返り「リバイバルムーブメント」を再考する。さらに、次の10年に向けて期待のバンドもピックアップしようというコーナーです。
第4回目は、己の道を信じ歩み続けたベテラン達の10年を振り返りたいと思います。
4.「Back From The Dead」~不朽の精神、不易の魂~
オールドスクールデスメタル・リバイバルには二つの側面があります。一つは若手によるオールドスクールデスメタルの復興。そしてもう一つはベテランの活躍および再評価です。若手だけではムーブメントは一過性のもので終わる可能性がありました。しかし、ベテラン達の粘り強い活動と常に全盛期だと思わせる作品のリリース、更に90年第初期デス組の復活などの相乗効果によりムーブメントが定着したと考えます。
ということで、今回もガシガシ貼っていきます!忘却の彼方に葬られた古のもの達の逆襲が始まる。
Incantation:12年作「Vanquish In Vengeance」14年作「Dirges of Elysium」
まずはIncantation。90年代から活動を続けるベテラン。このIncantationの存在自体がリバイバルムーブメントの直接的な要因であると言っても過言ではありません。00年代からリバイバルが活発化した際、アンダーグランド表層面のバンドから地下の地下の地下奥深くのバンドまでIncantationの影響を受けていないバンドはいないと言えます。
10年代に入りリリースされたこのアルバムの凄まじさと言ったら血も涙もないです。でも今聴き返すと意外とキャッチーだなと感じるのは、僕の耳がイカれたせいなのか、時代がおかしくなってしまったのか……
Cynic:08年作「Traced in Air」14年作「Kindly Bent to Free Us」
「Traced in Air」は08年のアルバムですがリバイバルとの因果関係、また多様性の面でも外せません。当時ニューアルバムの報に世界中のデスメタルファンが驚いたと思う。僕もデスメタルの「デ」の字も知らない後輩に前のめりで「Cynicのニューアルバムが15年ぶりに出るよ!」って語ってました。
Sean Reinert & Sean Maloneのリズム隊から繰り広げられる宇宙は正に神秘であり奇跡だったなと。
Gorguts:13年作「Colored Sands」16年作「Pleiades’ Dust」
変態デスメタルと言えばGorguts。復活作でもある「Colored Sands」は2010年代を代表するアルバムナンバー1に選んでも不思議ではない怪作です。これ以降、若手でもGorguts流暗黒劇場をOSDM的手法で再現するバンドが多く(?)出てきましたが、正直これより先、暗黒アヴァンギャルドを探求したいとなればOSDMではなくDeathspell Omega等のブッラクメタルやPortalなどの暗黒テクニカルデスメタルの道を辿ったほうが良いと思う。OSDMという名称は細分化したジャンルにおいてインデックスにはなるが実際一括りするのは無理がある最たる例である。
Immolation:17年作「Atonement」
これもオールドスクールデスメタルという言葉がImmolationに対して適切かどうかは置いといてImmolationもまた90年代デスメタルの殻を破ったバンドです。鍛錬を重ね現役を貫いている威厳的な重みと現代のあらゆるエクストリームミュージックに通じる重みを備えた、言わば完全体になったと感じる一枚。ジャケも破裂の天使的な終末感が出て良きかな。聴きやすいのでこれからデスメタルを探求しようとしている人にもオススメです。
Paradise Lost:15年作「The Plague Within」17年作「Medusa」
この10年代の二作は心の底から感動しました。Paradise Lostは僕の音楽観を形成したバンドで思い入れも一段とあります。今語らせてもらうと、僕は「Icon」がParadise Lostにとって最初の分岐点だと思っている。もし、メランコリックな「Draconian Times」ではなく「Icon」路線を続けていたならばどうなっていたのか?その答えが20年ぶりに見つかった気分です。一にも二にもゴシック。兎にも角にもゴシック。重厚で荘厳耽美なデスメタルの世界。楽園からの追放。それは厳しい道のりであるが、希望への一歩でもあるのです。
Carcass:13年作「Surgical Steel」
Carcassが再結成、しばらくしてニューアルバムが出ると聞いたときは期待というより不安感の方が大きかった。なにしろ十何年ぶりですからね。ですがそんな事は杞憂でした。デスメタルなんだけどロック。デス&ロールじゃなくてCarcass&ロールだよ!今年(2020年)はニューアルバムが出るということなのですが、もう何も心配していない。絶対最高のロックを聴かせてくれる!関係ないけどCarcass見るとジーンズを履きたくなる。
Asphyx:12年作「Deathhammer」16年作「Incoming Death」
初期デス組が10年代に出すアルバムは快作が多い。何か90年代より荒ぶっている感じですがAsphyxもかなりキテました。もう初聴のインパクトね。初期の頃より暴虐デススラッシュぶりが凄まじい。「Incoming Death」はレコードで買ったけど本気で回転数を間違えたかと思って焦りました。もちろん腐敗臭漂うミッドのグルーヴ感も健在。Asphyxはこの二作から聴いても全然OKです。むしろ思い出補正がない方なら今の方がカッコイイと感じるかも。
Morgoth:15年作「Ungod」
ドイツのデスメタルといったらMorgoth!この再結成は嬉しかったです。ただ再結成時はオリジナルメンバーのVoがいましたけど先行シングル発売後すぐに脱退。あの声無しでMorgothが成り立つのか?成り立つんです!Morgoth節は健在。ミッド中心のグルーヴに疾走パートやドラマチックなメロディを挿入しダレさせない。一つ欲を言うともう少しロウな音だったらどうなってたかな。なんて贅沢な要求か。現在活動停止中。
Cannibal Corpse:14年作「A Skeletal Domain」17年作「Red Before Black」
Cannibal Corpseは変わんねぇ変わらねぇ言われてるし自分も言ってたけどやっぱり変わったよね。暴力的な音楽性は変わらないけどデスメタルファンだけのために武装した過激な表現を削ぎ落し鍛錬を積み重ねた技巧で純粋なブルータルスラッシュを奏でるようになった。カッコよさのベクトルが変わった気がします。自信をもって全メタルファンにオススメできるけど未だ昔のイメージに付きまとわれているのが難点。
Purtenance:15年作「…to Spread the Flame of Ancients」17年作EP「Paradox of Existence」
フィンニッシュデスメタルのレジェンドがまさかの再結成。そして再結成後のアルバムの話は置いといて、この15年作の3rdアルバムは素晴らしかった。92年にリリースされた1stは技量的にも音質的にも劣悪だったためマニア向きのアルバムとなってしまいその後もマニア向けのバンドというイメージが定着してしまいました。しかし、その音楽性を現代へディティールアップした結果、本来の特色が顕著にあらわれることになる。Purtenanceがどんなバンドだったのか、是非聴いてみてください。
Entombed A.D.:14年作「Back to the Front」19年作「Bowels Of Earth」
キタコレ。これはつまらないアルバムでした!1ミリも内容覚えていないよ!当時Entombedニューアルバムまじか!?からの~分裂騒動。アゲてから落とす。スラミングか何かかな。いやむしろ話題性ならナンバー1だった。別な意味でリバイバルムーブメントに貢献したバンドです。
でも、最新作のPV見るとかなりカッコイイ感じ。(出てたの知らなかったけど) (しかも3rdアルバムかよ)
まだまだ、書かなきゃいけないバンドはありますが疲れたのでこの辺でストップ。
ということでベテランバンドの10年代を自分なりに振り返ってみました。ほんとに素晴らしいアルバムばかり。この記事を書きながら聴き返してましたが、現在の感覚で聴くとまた新たな発見などが見つかり感想が溢れてきます。今が全盛期とは言いませんがリアルタイムで追うことで得られるものも確実あります。各バンドがこのムーブメントで一旦仕切り直したと考えるとこれからは前に進むしかありません。次の10年はもっと面白くなると思います。
リバイバル考察 ~価値観の変動から考える~
時代による価値観は常に移り変わりその時の価値観が良いのか悪いのかは、その時を生きるものにはわからない。自分にとって世間にとって良きことだと思っていても後世の環境で価値観の結果は変わる。それはもう善悪とか関係なく仕方のない事であり、人間には時の因縁、因果を知ることはできない。業に抗う術を持っていないことは歴史が証明している。
Obituary:14年作「Inked In Blood」17年作「Obituary」
2010年代はオールドスクールデスメタル再評価=Obituary再評価の10年であったとも思います。
00年代は一定の人気はあるけれどあまりうだつが上がらない状態だったかと。僕から見て状況が変わったのはレコーディング資金をクラウドファンディングで集めてた時期からです。最初は同情的な気持ちもありましたが蓋を開けてみれば「Inked In Blood」はヒットしバンドの評価は急上昇。日本でもラウドパーク15を挟み17年作「Obituary」リリース後は冗談抜きで今一番人気のあるデスメタルバンドになったのではないでしょうか。日本で最も忌み嫌われた存在だったObituaryがです。
オールドスクールデスメタル・リバイバル
時は00年代を迎えるころ、アンダーグランドではより実験性が重要視されあらゆる表現と価値観が生まれメインストリームへと波及する。ジャンルは細分化されその垣根すら意味のないという風潮も見られるようになる。仮にそれらを多様性というならば多様性が世界の音楽図を変え多くのバンドが迷走しはじめた。時代性が急激に変化したことにより往年のデスメタルは忘却の彼方に追いやられいつしか「オールドスクール」と呼ばれるようになる。一方、その多様性はエクストリームミュージックを大衆化させることにもなった。日本ではラウドロックと呼ばれた新たなメタルがアリーナをSOLD OUTさせる時代が来たのです。ここから時間はかかったけれど新たな時代性は無自覚のうちにデスメタルへの嫌悪感を低減させ先代までの価値観を書き換えたと思われます。そして多様性が定着した時代(世代)が、オールドスクールと言われる音楽と90年代のアンダーグランドの価値観を理解し、新たな価値を見出すのは当然の帰結だったのでないかと思いました。
今回はここで終わりです。なんだか最終回みたいなノリになってしまいましたがまだ続く予定です。
それでは次回をお楽しみに。
アナログさん
毎回楽しく拝見しています。ありがとうございます。m(_ _)m
Carcassの「Surgical Steel」は今でも愛聴していて、Billのギターには未だに興奮させられます!!
新譜も超楽しみです!
Obituaryはラウドパーク15のExtreme Stageのトップバッターで圧倒された記憶があります。
今ラウパが開催されるなら、Obituaryは一番手じゃなくてもっと後でしょうね!
アナログさんは、先日のObituaryのライブは行かれましたか?
気づいたらソールドアウトしていて、私は行けませんでした・・・
2020/02/12 @ 00:20
KKさんコメントありがとうございます。
私もCarcassの新譜楽しみしてますよ。昔の路線に戻ろうがロックンロールになろうがメロデスになろうが結局Carcass節は健在ですからね!
先日のObituaryは私もいけませんでした。Obituaryに限らず昨年はモヤモヤすることばかり。レコード屋にも全然行けてないし。現実は厳しいのです。
2020/02/12 @ 22:23