『Obituary / Obituary』

4月デス!
「桜と共に舞い散っても必ず僕らはまたどこかで出会いを果たすだろう」
うんうん。そうだそうだ。春は希望の泉だよ。などと、意味不明の言葉をつぶやきながら深夜のけものアニメ見てポロポロしておりますが、そんなことよりレコードですよ。こんにちは。

本日のレコードは当然「Obituary」デス!!!

 

カバーアートはAndreas Marschall


ダウンロードコード付き
 
 

■OBITUARYあるところにオールドスクールデスメタルあり

前身のバンドである”Xecutioner”を含めると実に30年以上のキャリアを誇る大ベテラン。今やフロリダの至宝であり、デスメタル界の王者として君臨するObituaryの記念すべき10枚目のスタジオアルバムが届きました。そのアルバム名はズバリ「OBITUARY」 セルフタイトル来ました。
 


 
 
いや~、キテますねぇ。でもアルバムの感想は後にして、今回は記念すべき10枚目ということなので、僕個人のObituary論を交えながらバンド「OBITUARY」と「オールドスクールデスメタル」を振り返ってみようと思います。全てをリアルタイムで聴いてきたわけではありませんが、経験上Obituaryを追うこと=オールドスクールデスメタルの歴史と現状を知るといってもいいのではないかと思っています。
 
 

■原点にして頂点 その歴史を振り返る

まず、Obituaryの音楽性を簡単に説明しますと初期Celtic Frostから影響を受けたハードコアライクなデスメタルです。ドロドロズブズブなドゥーミーサウンド。キャッチー&バイオレンス。そして唯一無二のグロウルで30年間ブレることなく地を這い続ける。それがObituaryデス。

音楽的に大きくブレることはないといっても、やはり節目というものはあり、僕はその節目をオールドスクールデスメタルの「黎明期~全盛期」次に「低迷期~リバイバル」そして現在の「再評価の時代」に結び付けて分けてみました。
また一応アルバムごとにお気に入り度を★マークで表していますが、大好きなバンドなので評価は参考になるかアヤシイところであります。


レコードを集めるのはけっこう大変。
 
 
 

■オールドスクールデスメタル「黎明期~全盛期」編


 
Slowly We Rot (1989) ★★★★
Cause of Death (1990) ★★★★
The End Complete (1992) ★★★★
World Demise (1994) ★★★★★
Back from the Dead (1997) ★★★
 
『Slowly We Rot』
フロリダのDeathを筆頭に80年代のスラッシュメタルシーンから派生したデスメタル。
Obituaryも89年1stアルバム「Slowly We Rot」でアルバムデビュー。黎明期のデスメタルバンドらと同様スラッシュメタルの要素を含んでいますが、Obituaryはハードコアクロスオーバーサウンドを全面に出し個性を発揮。この「Slowly We Rot」のバイオレンス性とキャッチーなグルーヴこそがObituaryの基幹部分であると言えるでしょう。


 
 
 

『Cause of Death』『The End Complete』
90年代からデスメタルはキャッチー性を排除していきます。あるものはテクニカル路線へと、またあるものはひたすら暴虐路線へと、バンドそれぞれが唯一無二の存在を目指し進化していきます。オールドスクールデスメタル全盛期の到来です。

Obituaryもハードコア色を後退させ腐敗臭漂わす、正にオールドスクールデスメタルという感じに邪悪な雰囲気を放つようになりました。Obituaryと言ったらこの2枚というくらいの名盤。
これは憶測ですが、この時期に日本のメタル雑誌にも「デスメタル」が取り上げられ多くの人に知れ渡ったようですけど、これがメタルヘッドをふるいにかける形となり、日本のシーンを大局的に見るのならばここが分岐点になったのではと思いました。もしかしたらObituaryは日本にとって罪なバンドなのかも。


 
 
 

『World Demise』
94年発表の4thアルバム。メタルシーン全体の変化が顕著になってきた頃であり、所謂モダンヘヴィネス化の時代です。どことなくObituaryもその影響を受けておりますが、Obituaryの場合元からモダン的要素があったため自然な形で進化したと思います。むしろファン目線でいえばようやく時代がObituaryのコンセプトに追いついたんや……

僕のオススメアルバムは断然この「World Demise」です。
スラッシュ&デスメタル、ドゥーム&ハードコア、キャッチー&バイオレンス。
対になる要素が共鳴し完璧なグルーヴになる。ブルータルなのに心地よい。もう、僕にとってこのアルバムが一つの完成形といってもいいくらい。実際このアルバムがObituaryの方向性を定めたといえるでしょう


 
 
 

「Back from the Dead」
前期Obituaryのアルバム群では目立たぬ存在ですけどなかなかの名作。前作と同様ハードコア色を包み隠さずキレとノリを重視した作品です。分かりやすさ聴きやすさで言えば前作以上ですが同じような曲が続くという印象も否定できません。1曲目のThreatening Skiesはめっさカッコいいね。

しかし、時は1997年。メタルシーンは激動の時代を迎えております。まず、音楽情勢的に言えばロックシーンに無茶苦茶勢いがありました。ロックタリカとか言っているバンドもいましたね。メタルシーンではNu Metalやメロデスが台頭し、オールドスクールデスメタルは再びアンダーグラウンドへと回帰。
そしてObituaryはというと、理由は正確にはわかりませんがここで解散してしまいました。
 
 
 

■OBITUARY再び!オールドスクールデスメタル「低迷期~リバイバル」編


 
Frozen in Time (2005)★★★★
Xecutioner’s Return (2007)★★★
Darkest Day (2009)★★★
 
オールドスクールデスメタルにとって暗黒の時代が続く2003年、救世主の如くObituaryが再結成。
そして2005年待望の復活作第一弾「Frozen in Time」を発表。エグゼクティブプロデューサーにはScott Burns氏を起用(たぶんコンソール卓の前で首振ってただけだと思う)余談ですが当時リリースパーティの写真がオフィシャルページ上に掲載されておりScott Burns氏の元気な姿が拝めました。プログラマーになったとかなんとか。

話を「Frozen in Time」にもどしましょう。僕にとって思い出深いアルバムです。基本的なObituaryスタイルは変わらないのですが凍てつく鋭さがあり邪悪感が少しが増しました。近年ライヴの定番になっているイントロ#1 Redneck Stomp を始め名曲の#3 Insane、トライバルなドラムが印象的な#8 Slow Deathと個性的な曲が並ぶ。思い出補正を抜いても良いアルバムだと言えます。地味にオススメ。


 
 
 

しかし、この再結成を喜んでいるのは極一部のファンだけで「Frozen in Time」発売後はほとんど話題にならずお店では500円で投げ売りされていました。続く『Xecutioner’s Return』『Darkest Day』も攻撃的でアグレッシブなハードコアデスメタルを聴かせてくれたアルバムであり現在のObituaryに繋がる良作です。LOUDPARK08で再来日し盛り上がったけれど、日本で人気が確立されているかと言われると……。実際セールスの方はどうだったのか気になります。
 

ちょうどこの頃、若手によるオールドスクールデスメタル・リバイバルが活性化してきた時期です。後のオールドスクールデスメタル再評価の流れに繋がる出来事ですが、まだこの時点ではアンダーグラウンドにおける一過性の流行であると冷やかな目を向けられてた気がします。ObituaryもCandlelight Recordsから契約を切られレーベルのサポートを失いました。

しかし、契約終了後もObituaryは全世界を飛び回りライヴ活動を続けるのです。
地道な活動ですけどその圧倒的なパフォーマンスを見たものは必ず感化されます。

若手バンドによって活性化してきたリバイバルムーヴメントとベテランバンド達の圧倒的ライヴパフォーマンスによる相乗効果によってリバイバルシーンは徐々に大きくなりオールドスクールデスメタル全体の再評価へと繋がったのではと、僕は考えています。
 
 
 

■逆襲のOBITUARY! 「再評価の時代」


 
Inked in Blood (2014)★★★★
Obituary (2017)★★★★★
 
『Inked in Blood』
契約を失ったバンドはレコーディングの資金集めにキックスターター(クラウドファンディング)を使いました。目標 $10,000 に対して集まったお金は約6倍の $60,669 更にインディー大手のRelapse Recordsと契約し9thアルバム「Inked in Blood」を発表。リリース第1週目に米国だけで5200枚売り、ビルボード200チャートの75位に入るという快挙を成し遂げるのです。ちょっと感動しますね。

原点回帰とも受け取れるシンプルな曲構成で繰り広げられるバイオレンス&キャッチーなハードコア・デスメタル。
そして、Loudpark15で再び来日。新曲をメインにしたセットリストながら当日は素晴らしいライヴを披露。前座扱いに不満はありましたが、結果的には日本においてもObiutary再評価の雰囲気を感じました。
 
 

『Obituary』
世界中でObituary再評価と勢いを保ったままリリースされたのがこの10thアルバム「Obituary」です。
セルフタイトルからその自信を伺えますね。 Relapse Recordsよりリリース。
メンバーも前作と同じラインナップ

John Tardy – Vocals
Donald Tardy – Drums
Trevor Peres – Guitars
Terry Butler – Bass
Kenny Andrews – Guitars

前作「Inked in Blood」から、更にシンプルにそしてより攻撃的になった印象。音は重いがリフ自体は軽快に走りノリのよさに重点を置く。また、前作から加入したKenny Andrewsギタープレイが完璧にハマりました。ベタなメタル様式型のギタープレイを得意とするがこれがObiutaryのヘヴィリフとの相性が抜群によい。特に#2のSentence Dayのハモリは反則級の悶え死にギタープレイ。

セルフタイトルに恥じぬ素晴らしい出来。Obiutaryの良さはライヴにあるがこれは家で聴いても漲ってくる。最高傑作といってもいいのではないでしょうか。全盛期の90年代に成しえなかった境地が見えてきたような気がします。いや、既にその先を切り開いているのかもしれません。


この11曲目はレコード未収録ですけどスゴクカッコイイ。
 
 

また、ライヴが見たいですね。
オールドスクールデスメタルあるところにObituaryあり、Obituaryあるところにオールドスクールデスメタルあり!

きっと、どこかで必ず見れるであろう。