『Immolation / Atonement』

どうもどうも、アナログです。通勤用の革靴を買うお金でレコード買いました。こんにちは。
そんなことより本日のレコード紹介デス。キタ、今年のベスト候補「Immolation / Atonement」デス。

いやいやいやいや、神降臨してる。めちゃくちゃスゴイアルバムじゃないか。
といういのも、レコード買う前にほんのりとネットで評判を調べてみたのですが、あまり騒がれていない様だったのでどうなんだろうかと心配していたのです。けどそんな心配は無用でした。これは最高デス!
 


 
 
 

カバーアートはPär Olofsson まさに神ジャケ。


インナーアートはZbigniew Bielak こちらも芸術的で素晴らしい。 

 

2000年以降のオールドスクールデスメタルを考える

はっきりいって日本では”Immolation”の人気がありません。Incantation、Suffocation、Gorguts、Morbid Angel等が来日できるのに何故だろうか。日本での”Immolation”不人気の原因を考えていると、世界で再評価が進むオールドスクールデスメタルが日本で盛り上がらない状況と結びつく気がしました。これから書くことはインタビューやソースなど一切なくすべて僕の主観です。あしからず。
 

なんとなくバンド名を声に出して発音してみる。イモレーション。 もう一度、イモレーション。
だってさ、オビチュアリーとかモービッドエンジェルとかサフォケイションとか、意味がわからなくても響きがカッコいいさ。カーカスとかボルトスロワーとかはあまりカッコよく響かないけどトイズファクトリーからリリースされたCDの題名が『疫魔交響曲』『第四次十字軍遠征』とかもう反則。多感な時期にこんなん買ったらそりゃ人生こじらすさ。

さて、冗談はこのへんにして、日本での”Immolation”不人気の原因を真剣に考えてみる。
情報源が限られた時代、初期デスメタルの知名度は90年代中頃までにどれだけアルバムを出しているか、カバーアートの出来、そしてなにより日本盤の有無によって差がでたと思う。それはメタル全体にいえる話ですけど、忌み嫌われたデスメタルの場合この差が特に激しい。

話を”Immolation”に戻すと1stアルバム「Dawn Of Possession」が発売されたのは1991年。名盤デス。
次のアルバム「Here In After」が出たのが1995年でこれがちょっと遅かったのかな。日本ではすでにデスメタルバンドの知名度(人気バンド数)はほぼ固定されてしまっていた。そして、時代の流れは「変革の時代」へと突入してしまった。こんな感じかなと思うけど更に突っ込んで考察してみようと思う。
ここで僕は「変革の時代」が”Immolation”不人気の原因であると仮定してみました。
 

1995年頃というと、80年代から続いていた伝統スタイルが終わろうとしていた時期であり、初期デスメタル(オールドスクールデスメタル)も一部のバンドを除きメインストリームでは話題になることもなくなりました。しかし、音楽性が多様化するなか”Gorguts”を初め初期デスメタルもまた実験的な要素を取り入れ確実に進化していたのです。”Immolation”ならば「Failures For Gods」「Close to a World Below」の2枚です。不協和音とループを多用したアヴァンギャルド性が表面化し、それまでのブルデス路線とは一線を画するアルバムになりました。特に「Close to a World Below」の示した音楽性は2000年以降のオールドスクールデスメタルにとって重要な根源でもあります。

ではなおさら、そんなスゴイバンドがなぜ日本で注目されないのかという疑問が沸いてきますけど、単純に考えて90年代初期デスの世界観、固定観念に囚われている声の方が大きかった。もちろん全員ではないけどデスメタルは「こうあるべき」という主張が強く、変革を歓迎しなかったと感じました。自分にも言えることですが先進すぎて理解できなかったのです。理解できないものは恐ろしい。
そして、残念ながら現在のオールドスクールデス再評価が盛り上がらない状況と似る部分があり障壁にもなっていると個人的には思います。

前置きが長くなってしまいました。ようやくニューアルバム「Atonement」の紹介です。
 

現在までオールドスクールデスメタルを支えた功労者

まず、気になるのは90年代のデザインに戻したロゴですね。その影響はサウンド面に顕著に出ています。
前作のDjent風ガチガチサウンドではなくグルーヴ重視になり、更に意外だったのは暴虐性を抑え気味にしてあるということです。しかし、この暴虐性の抑制は”Immolation”の音楽性を理解するのにあたって逆に功を奏していると思う。2000年以降続く”Immolation”流のアヴァンギャルドサウンドの構成をわかりやすく説明されているようであり、集中して楽曲を楽しめるようになった。無機質な不協和音と有機的グルーヴのアンサンブルはいつも以上に神秘的に感じ、デスメタルとしての威厳は健在のまま、畏怖の念を起こさせます。ふと聴きながら思ったのですが、これデスメタル期の”Opeth”が好きな人にもいけるのではないかな。エクストリームサウンドを芸術的に鑑賞できる点では同じではないかと思う。

僕は、このアルバムを2000年以降のオールドスクールデスメタルを凝縮した作品として猛烈にオススメしたい。ブリブリ、ドロドロの腐敗臭オールドスクールデスメタルが好みの方には物足りないかもしれないけど、2000年以降のオールドスクールデスメタル、Incantation、Gorguts、Funebrarum等が築き上げたスタイルを良い意味で綺麗にまとめ、あらゆるファン層にアピールできるアルバムを作った”Immolation”には感謝しかない。このアルバムを聴いてよかったと思ったら是非現在のオールドスクールデスメタルをガシガシ掘って欲しいのデス。そうすれば可能性は無限に広がる! 通勤用の革靴などどうでもいいから、早くこのアルバムを買うのだ! Grrreeeeeaat!!!


 

そして来日してください。