オールドスクールデスメタルは強い!
僕の脳内の話で、とても狭い範囲の話なんですけど、脳ミソが小さいとかそういう話は置いといて、最近のオールドスクールデスメタルを聴いていると「うひょ~!」ってなるんですよね。いいえ違う、言葉では表現できない。すぐに頭悪い文章になるので詩人を目指すべきだった。
時は2000年代、新世代によるブルデス、テクデス、ブラックメタル、ポストメタルがUGシーンに台頭し、オールドスクールデスメタル(以下”OSDM”)は過去の遺物になりつつありました。
元々日陰の存在ですけど、脚光を浴びた90年代に比べると暗黒の時代と言えます。
しかし、その音楽性は絶たれることはなくFunebrarum、Slugathor、Dead Congregationなど多くのバンドに受け継がれ、むしろ地下深くで進化していたのです。
そして、2009年前後から再びOSDMが評価されるようになり、今もなお、原点を踏襲する若手バンドが続々登場しているのが現状です。
活発化するアメリカン・オールドスクールデスメタル
中でも、Horrendousを筆頭にアメリカ(+カナダ)の若手OSDMには勢いを感じます。Nucleus、Hemotoxin、VoidCeremony、Temple of Void、Garroted、Calcemia、Spectral Voice、Sentient Horror、Outer Heaven、Tomb Mold、Zealotry… などなど、デスメタル発祥の国ならではの文脈に加え、多様化した音楽を聴いて育ってきた世代だけに表現力が柔軟なのが特徴と言えます。
そして、その柔軟な表現力をもって今世界を沸かせているのがこの Blood Incantation です。
本日紹介のレコードは彼らの記念すべき1stアルバム「Blood Incantation / Starspawn」デス!
今作はコロラド州デンバーにあるWorld Famous Studioで、ほぼアナログでレコーディング&マスタリングしたそうです。オーバー・ダビングをなるべく使わずバンドアンサンブルを重視したレコーディングにより、緊張感と生々しい迫力あるサウンドが楽しめます。これは是非アナログ盤で!
全世界が注目するOSDM・NEXT 待望の1stアルバム登場!
アメリカはコロラド州出身のデスメタル。2016年 1stアルバム。レーベルはDark Descent Records。
結成は2011年。3本のデモを制作したのち2015年Dark Descent Recordsより「Interdimensional Extinction」EPでデビュー。
メンバーは以下の4人
Isaac Faulk – Drums
Paul Riedl – Guitars, Vocals
Morris Kolontyrsky – Guitars
Jeff Barrett – Bass
デモからデビューEPまでゲストとして参加したベーシスト “StarGazer” の Damon Good(Vo,Ba)はバンドには留まらず、今作からフレットレスベースを操る Jeff Barrett を正式メンバーに向かい入れました。なお、ドラム以外の3人は “Spectral Voice” のメンバーでもあります。
受け継がれる帝王の威厳、そして衝撃の結末
Astral Death Metal とか Cosmic Death Metal などと呼ばれるように宇宙、神話、SF などをテーマにするデスメタル。具体的にいうと Timeghoul & Morbid Angel あるいは DEATH & Cynic を連想させるプログレッシブ感のあるテクニカルデスメタルです。
原始の畏怖を現代的に解釈し巧みな技量で再構築する。
前作のデビューEP「Interdimensional Extinction」からテクニックと緊張感ある楽曲面で他の新人を圧倒しており、素晴らしいポテンシャルを感じましたが、まさか今作で早くも「帝王の風格」を漂わせていることに驚かされます。堂々たる威圧感に畏敬の念を抱かずにはいられません。
具体的に楽曲面で進化したところをいえば、全体的にドゥームデスの暗黒性及び荘厳性が追加されたことでしょう。このドゥーム要素により緩急の表現力が大幅に広がり#1「Vitrification of Blood (Part I)」のような13分に及ぶ大作であっても鑑賞に堪える出来となっております。プログレデスとして中期Opethファンの方にもオススメできます。
また、以前どこかのインタビューで伝説のドゥームデスメタル “Anhedonist” について熱く語っているのを読みました。この”Anhedonist”に対するリスペクトが今作に大きく影響していると思われます。
粘液質の深淵から宇宙の混沌まで支配する Morbid Angel の持つ威厳を受け継ぐ新人。
凄すぎるとしか言いようがない。 Greeeeeaatt!!!
「まるで天上の祝祭……」
宇宙の混沌、神秘性をデスメタル的に追求した結果、郷愁のメロディに行き着いた。
藤子・F・不二雄SF短編「旅人還る」や映画「インターステラー」のような感動的結末です。