どうもどうも。アナログです。こんにちは。
さて、昨年末(2019)の話ですが宇宙から電波を受信したか、あるいは神からの啓示だったのかわからないけど突然ブログを復活させようと思ったわけで、実際復活させたのですが、まだ新譜は一枚もレビューしていません。久しぶりですが今回のレビューで真の復活ということになります。そしてちょうど復活第一弾にふさわしいレコードが届きました。今回のレビューはこのレコードから「Temple Of Void / The World that Was」 2020年ベスト決定!!! おっと。口が滑った。
アメリカはミシガン州デトロイト出身のドゥームデス。2020年3rdアルバム。Shadow Kingdom Records よりリリース。
メンバーは
Brent Satterly:Bass
Jason Pearce:Drums
Alex Awn:Guitars
Mike Erdody:Vocals
Don Durr:Guitars
リーダー的存在のギター担当Alex Awn氏は元々イギリス出身であり、Paradise Lostから多大な影響を受けたとのこと。その公言通り、Paradise Lost影響下の耽美的ゴシックと暴虐のドゥームデスを融合したサウンドを得意とするバンドです。2014年の1stアルバム「Of Terror and the Supernatural」は知る人ぞ知る存在でしたが、昨今のOSDMムーヴメントの波を味方につけ2017年作「Lords of Death」で一気に知名度を上げる。
Temple Of Voidの魅力といえば何度も言っていますが、激重のドゥームデスパートとゴシック的耽美性の対比。今作も閉塞感、絶望や鬱憤のネガティブサウンドをメインとしているのですが前作までとは印象が異なります。閉塞感はドゥームデスにとって基軸であり音楽的な魅力にもなっていますが、その閉塞感から一歩抜け出した、その一歩先がどれほど未知なる領域なものなのかを感じさせる作品です。
どの曲も展開のバリエーションが豊富になり、一曲一曲、最初と最後の曲調のギャップに戸惑い、余韻に浸り、感動へと変化する。まるで名作映画を見た後のような感覚です。もっと大袈裟に言えば死と隣り合わせの緊張感、絶望から生への執着をドゥームデスをもって芸術へと昇華させた作品と言ってしまいましょう。特にラストのアルバムタイトルトラック「The World That Was」には以前Blood Incantationに感じた時のようなポテンシャルの高さを感じました。
Entombedフォロワータイプのデスメタルとしてデビュー。デモやEPそして1stアルバム「Sleepers in the Rift」でシーンを盛り上げたバンドでしたが、Century Mediaに移籍後アヴァンギャルドでサイケデリックな方向にチェンジ。2ndアルバム「Sweven」はキャッチーな要素はほとんどありません。本当にアヴァンギャルドなアルバムなので諸手を挙げてオススメはできないです。しかし、結果論だろうけどこのアルバムによってシーンに対し何かのスイッチが「カチッ」と入った気がする。バンドは翌2015年に解散。
が、なんとこの話には続きが。
中心人物Robert Andersson氏によるニューバンド、その名もSweven。相変わらず実験性の強い作品ですがスゴク良いかも。Tribulation, Chapel of Diseaseが好きな方にオススメ。
■ Miasmal
11年 1st「Miasmal」 14年 2nd「Cursed Redeemer」
16年 3rd「Tides of Omniscience」
14年 1st「Of Terror and the Supernatural」 17年 2nd「Lords of Death」
ニューアメリカンゴシックTemple of Void。僕の超オススメバンドです。サウンドはよくフィンランドのHooded Menaceと比較されます。僕が感じた限りではその根源はParadise Lostだと思う。PLの「Shades of God」及び「Icon」を3倍激重にしたようなデスメタルです。耽美性あるデスドゥームとして注目された1st「Of Terror and the Supernatural」次にコマーシャル的にならずヘヴィネスを追求した「Lords of Death」共に甲乙つけがたいアルバムです。最近海外の有力紙Decibel MagazineやKerrang!でもプッシュされ始めたのでヤバいでっせ。
更にもうすぐ3rdアルバム「The World that Was」がリリースされます。僕は発売されるまで聴きませんが、音源は貼っときますのでよかったら聴いてみてください。
20年 3rd「The World that Was」ジャケからして名作の予感。
■ Zealotry
13年 1st「The Charnel Expanse」 16年 2nd「The Last Witness」 18年 3rd「At the Nexus of All Stillborn Worlds」
アメリカのアヴァンギャルド・テクニカルデスメタル。Demilich, Gorgutsの影響下にある音楽性でデビュー。1stアルバム「The Charnel Expanse」はドゥームデスとしても聴ける名作。変化があったのはやはり2ndアルバム「The Last Witness」から。トリッキーなリフによるアヴァンギャルド性は前作同様ですが、メロディや大胆なストリングス導入によって曲構成に抒情性を持たせることに成功。実験性あるプログレッシブデスとして大きな成長の跡が見られます。3rdアルバム「At the Nexus of All Stillborn Worlds」になると更に前衛的になる。もうなんというかフリージャズの即興演奏感すら漂う。かと思ってたら歌劇的クワイアの導入などもうわけがわからない。最高です。
Hellish Crossfireのメンバー在籍のドイツのデスメタル。ドイツらしいイーヴィルな音楽性と荘厳な雰囲気を併せ持つEP「Venenum」デビュー。僕もこの耽美的で血沸き肉躍る音楽性に魅了されたが、しばらく音沙汰がなく解散したかなと思ってた矢先、1stアルバム「Trance of Death」をリリース。「ワレ生きとったんかー」と驚いたが、もっと驚かせたのはそのアルバムの音楽性。勇猛な基幹部分は変わっていないけど邪悪的なものは後退し、よりプログレッシブなバンドへ変化。あくまでデスメタルですが、Chapel of DiseaseやTribulationが好きな方にもオススメします。
■ Sulphur Aeon
13年 1st「Swallowed by the Ocean’s Tide」 15年 2nd「Gateway to the Antisphere」
18年 3rd「The Scythe of Cosmic Chaos」
圧倒的。圧倒的ではないか!大事なことなのでアレ。
少し今までのバンドとは毛色が違いますね。90年代から続くデスメタルの正統的進化の道を歩む、正に王道と言えるデスメタル。そしてそのスケールのでかい音楽性はMobid Angel、Vader、Behemothなどと同系列で語れるほどの実力を持ち合わせています。特に2ndアルバム「Gateway to the Antisphere」で完全に門が開いた感がありますね。3rdアルバム「The Scythe of Cosmic Chaos」も同等に好き。気絶するかと思った。また、クトゥルフ神話を題材にしたジャケも圧倒的に強い。
ただ、聴くときは部屋の灯りを絶やさないように。
■ Suffering Hour
14年 EP「Foreseeing Exemptions to a Dismal Beyond」 17年 1st「In Passing Ascension」
19年 EP「Dwell」
15年EP「Interdimensional Extinction」
16年1st「Starspawn」
19年2nd「Hidden History of the Human Race」
ご存知の通り昨年(19年)Blood Incantationの2ndアルバム「Hidden History of the Human Race」が大ヒット。マニアから大手メディアまで、さらにOSDMどころか普段デスメタルを聴いているのかわからないような人たちからも絶賛の嵐。何故か? 作品がデスメタル的に素晴らしいことは間違いない。プログレ的視点からでも素晴らしい作品ではなかろうか。だけどここまで話題性が広がった理由は正直わからない。わからないけど、僕はこの10年間に起こったことの積み重ねがこのブレイクに繋がったと考えます。
左から Ketzer, Tribulation, Chapel of Disease
「あいたたた~」と思った方もいるでしょうが、僕の脳髄にはこの3バンドが刻み込まれてしまったのだから仕方ないのです。え~まずは、Tribulationからです。
1.Tribulation
09年 1st「The Horror」★オススメ
13年 2nd「The Formulas of Death」
スウェーデン出身のデススラッシュ。00年代初頭に正当派スラッシュHazardとして活動し、04年にバンド名をTribulationに改名し音楽性もホラーを題材としたデススラッシュへと変更。09年1stアルバム「The Horror」をリリース。ジャーマンスラッシュの影響下にあるイーヴィル性とHM-2スウェデスの暴虐性を取り入れたハイブリットデススラッシュ。まだ、さざなみ程度のOSDMリバイバル期に現れた若手として注目されました。しかし、次作「The Formulas of Death」で早くも方向性に変化が現れるのです。暴虐性より抒情性を重要視し、それに合わせたメロディアスな曲展開がファンの評価を二分しました。けれど、どちらかというと多くの人に受け入れられ新たなファンも獲得したのではないでしょうか。
15年 3rd「The Children of the Night」
18年 4th「Down Below」★オススメ
Century Mediaへ移籍してからの2作品。
聴けば聴くほど良くなるけど、当時の感想は「カッコイイけど何かイラつくな~」みたいな複雑な感じだったかな。簡単に言うならブラッケンドゴシック。2ndアルバム時にはその片鱗が垣間見えていたけど、ここまで思い切るとは想像できませんでした。実際どれくらい売れたのかはわかりませんが、他のバンドが方向性を変えた時「Tribulation化」したと言えば大体の音楽性が想像できる程に影響力を持つようになったと思う。サブジャンル化したと言ってもいいかな。
それにしてもTribulationの先見性はスゴイ。00年代のスラッシュリバイバルが盛り上がってた時にデススラッシュに転向し、OSDMが盛り上がって来たときにはブラッケンドゴシックに転向。1歩先を行ってる感じです。あと何回変身を残しているのでしょうか。楽しみです。
2.Chapel of Disease
12年 1st「Summoning Black Gods」
15年 2nd「The Mysterious Ways of Repetitive Art」
このアルバムで「Tribulation化」したと言えば話が早いけど、内容はポスト・デス&ロール化したといえる。繊細でエモーショナルな旋律を勇猛なエピック感で融合するという一見無謀というか相反する表現を見事に一体化したアルバムです。実験要素もあるけれど奇抜性あるいは過剰な音響が前に出ることは無く、あくまで楽曲で真っ向勝負している姿勢が素晴らしい。音作りにしても最小限のディストーションサウンドでも最高にエクストリームだと感じたし、演奏が上手い事もわかりました。未知なる高揚感、領域がまだあることを証明してみせた作品です。ちなみに次に紹介するKetzerのメンバーもChapel Of Disease推しのようです。激オススメだ!
God Disease:
14年EP「Abyss Cathedral」★オススメ
16年EP「Rebirth of Horror」★オススメ
19年1st「Drifting Towards Inevitable Death」★オススメ
19年EP「Hymns For Human Extinction」★オススメ
Womb:17年「Devotion To The Sea」★オススメ
スペインのアトモスフェリック・ドゥームデス。これはいいものだ。ゴシックメタルに通じる退廃的で耽美な世界観が心地よい。上記のGod Diseaseを更にメロディアスにしたようなサウンド。まだ垢ぬけていない感じはするけれど洗練されていない分余計にメロディの良さが際立つ良盤です。
Mortals:14年「Cursed to See the Future」★オススメ
アメリカ出身ブラッケンドスラッジ。この才能がうらやましい。一曲目で例えると、チューニングあるいはピッチを外しているかのような不協和音が気になって落ち着かない。だがこの不協和音は伏線であり、ナノマシーンが傷を自己修復していくように曲が進み、最高潮に達した時完全なる姿を現す。この独自の高揚感は何ものにも代え難い。芸術的といってもいい。ただ現在活動しているのか不明です。
Asphodelus:
14年EP「Towards the Gates」(Cemetery Fog)
16年EP「Dying Beauty & the Silent Sky」
17年デモ「The Veil Between the Worlds」★オススメ
19年1st「Stygian Dreams」★オススメ
最後は、これでもかというくらいに無駄に推し続けているフィンランドのゴシックドゥームAsphodelus。改名前のCemetery Fog時代から僕の心に刺さるものを持っていましたが客観的に見れば突っ込みどころ満載のバンドでした。17年のデモ「The Veil Between the Worlds」を聴いたときはどえらく成長していて涙出そうでした。20年代もAsphodelusを推していきます!
He Whose Ox is Gored:14年「Rumors 7"」
ジャンルはわからない。ポストメタル?ニュースクールなサイケロック?一糸乱れぬ弦楽リズム隊に浮遊感あるシンセ音が重なり合う実験的で先進的なサウンドスケープ。
BLACK LUNG:16年「See The Enemy」
世に対して怒りが黒く渦巻く激渋ダウナーブルース&ドゥーム(ノイズ付き)。ウォームな重さとリッケンバッカーによるソリッドな響きの組み合わせが最高。ボーカルも上手い。最近ソリッド担当のギターがやめてしまいました。新しいギターは正確無比のテクニカルマンで前任とは真逆の存在。新生BLACK LUNGが楽しみ。
Teleport:16年EP「Ascendance」★オススメ
スロべニアのコズミックデス。ブラッケンドスラッシュを主体としつつアヴァンギャル性やクリーンのギター導入部はGorgutsを彷彿させる。全体的にOSDM的なのりだけど現代的にリバイバルされたサウンドは一聴の価値あり。最近ノルウェーのEdged Circle Productionsからデモを出すなど20年代大いに期待できるバンドです。
Miscreance:18年デモ「From Awareness to Creation」★オススメ
イタリアのテクニカルデス。このバンドはコズミックではありませんし、そもそもスラッシュメタルのような気がしてきたけどDEATH, Nocturnus, Atheist的なテクニカル志向を感じ取ったのでここで紹介です。2013年結成と恐らくメンバーも若いかと思われますが安定した演奏力、ドラマ性のある楽曲も魅力的。僕のお気に入りバンド。
Inanna:12年「Transfigured In A Thousand Delusions」★オススメ
チリ出身のテクニカルデス。クラスの好きな人から「オススメのバンド教えて」と聞かれたらInannaと言うのだ!疑うな完璧な展開がまっているはず。それはさておき、何でしょうこの燃えるようなカッコ良さは。Emperorの高揚感をVektor的なテクニカルデスに落とし込んだような楽曲。分刻みで展開する楽曲、透明度のあるブルータルサウンド、カオティックなテンションにマスロック的ギターソロなど先進的で実験性溢れたサウンドに時代がついてこれなかった隠れた名盤。とにかく聴いてとしかいえない。激オススメな一枚!
Madrost:17年「The Essence of Time Matches No Flesh」
カリフォルニア出身のデス・スラッシュ。Vektorを彷彿させるコズミック感ありのスラッシュメタル。Vektorほどではないけどイイ感じにプログレしてます。基軸は激烈なスラッシュですが時々、はっと息を呑むほどドラマチックに展開します。なかなかおすすめ。