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Temple Of Void / The World that Was

2020年4月12日


 
 

『Temple Of Void / The World that Was』

どうもどうも。アナログです。こんにちは。
さて、昨年末(2019)の話ですが宇宙から電波を受信したか、あるいは神からの啓示だったのかわからないけど突然ブログを復活させようと思ったわけで、実際復活させたのですが、まだ新譜は一枚もレビューしていません。久しぶりですが今回のレビューで真の復活ということになります。そしてちょうど復活第一弾にふさわしいレコードが届きました。今回のレビューはこのレコードから「Temple Of Void / The World that Was」 2020年ベスト決定!!! おっと。口が滑った。

 

カバーアートはAdam Burke。ナイス異世界ジャケ。できればゲートフォールド仕様にして欲しかった。


限定カラーバイナル。毒々しい。毎作ジャケ絵には恵まれているけれどジャケの装丁などはあまり恵まれていない感じです。
 
 

ニューエイジオブゴシックメタル

アメリカはミシガン州デトロイト出身のドゥームデス。2020年3rdアルバム。Shadow Kingdom Records よりリリース。

メンバーは
Brent Satterly:Bass
Jason Pearce:Drums
Alex Awn:Guitars
Mike Erdody:Vocals
Don Durr:Guitars

リーダー的存在のギター担当Alex Awn氏は元々イギリス出身であり、Paradise Lostから多大な影響を受けたとのこと。その公言通り、Paradise Lost影響下の耽美的ゴシックと暴虐のドゥームデスを融合したサウンドを得意とするバンドです。2014年の1stアルバム「Of Terror and the Supernatural」は知る人ぞ知る存在でしたが、昨今のOSDMムーヴメントの波を味方につけ2017年作「Lords of Death」で一気に知名度を上げる。

 

絶望の果てと希望の糧

まず、前作までのアルバムを簡単に説明すると1stは「耽美性」が強く、そして2ndはコマーシャル的な願望は一切感じさせない「暴虐性」を高めた作品でした。ではこの新作はというと、もう予想がつくと思われますがその両方を兼ねたアルバム。結論から先に言えば完璧。もうこれ以上ないくらいスバラシイ作品です。

Temple Of Voidの魅力といえば何度も言っていますが、激重のドゥームデスパートとゴシック的耽美性の対比。今作も閉塞感、絶望や鬱憤のネガティブサウンドをメインとしているのですが前作までとは印象が異なります。閉塞感はドゥームデスにとって基軸であり音楽的な魅力にもなっていますが、その閉塞感から一歩抜け出した、その一歩先がどれほど未知なる領域なものなのかを感じさせる作品です。

どの曲も展開のバリエーションが豊富になり、一曲一曲、最初と最後の曲調のギャップに戸惑い、余韻に浸り、感動へと変化する。まるで名作映画を見た後のような感覚です。もっと大袈裟に言えば死と隣り合わせの緊張感、絶望から生への執着をドゥームデスをもって芸術へと昇華させた作品と言ってしまいましょう。特にラストのアルバムタイトルトラック「The World That Was」には以前Blood Incantationに感じた時のようなポテンシャルの高さを感じました。

生への渇望とも望郷の念ともとれる旋律が涙腺に響く。ほんとに感動した。
僕はこのアルバムを聴き終えた時、何故このブログを復活させようと思ったのか、その理由がわかったような気がしました。

 
 

EP集

ニューアルバムは6曲約37分で僕にとってちょうどいい長さでしたけど、中には物足りないよと言う人のために。

  
捨て曲無し!企画盤でも抜かりなし。

 
 

New Age of Death Metal Part10

2020年3月20日

 
90年代初期デスから感化された若手が活発的に動き出した2010年前後、さざ波程度だったシーンが荒波になり、今や世界中にそのうねりが押し寄せる。リバイバルという波にもまれながらも上手く乗る者、抗う者、呑まれる者、振り返るとなかなかエキサイティングな10年だったなと思います。

さて、10年代を振り返りながらリバイバルを考察するというテーマで始まったこのコーナーも今回で終わりです。今までこのコーナーで記載していなかった私的ベストバンドを一気に紹介。このバンドのこの一枚!という形で行ってみましょう!

 
 

13.「New Age of Death Metal」

 

■ Horrendous

 

14年 2nd「Ecdysis」

今にして思えば「2014年」という年が若手デスメタルにとって一つのターニングポイントだったのでは?と考えます。リバイバルバンドと呼ばれたMorbus Chron, Miasmal, Corpsessed等、そしてこのHorrendousが次々に脱フォロワーバンド化し、各々がオリジナルティ溢れる作品をリリースした年でありました。その中でも特にHorrendousの2ndアルバム「Ecdysis」は衝撃的でした。全編を通して響く甘いメロディ。所謂メロデスと言ってもいいですが、多方向から抜粋された音楽性を掛け合わせ、練りに練られた曲構成は見事と言う他ありません。この方向チェンジによる実験性が功を奏したかは火を見るよりも明らかです。

もちろんセルアウトだとかの批判もありました。日本のアンダーグラウンドで人気がないのもわかります。が、僕はクサい言い方すれば逆にHorrendousの何物にも囚われない自由な姿勢こそ、この時代へのカウンターになっているのではないかと思います。

2010年代ベスト1のアルバムを選べと言われたら僕は迷いなくこの「Ecdysis」を選びます。ベスト1が10個くらいあるけど。

  
12年 1st「The Chills」
15年 3rd「Anareta」
18年 4th「Idol」

HM-2デスメタル、Dismemberフォロワーと呼ばれていましたが、現在はよりプログレ的であり、もちろんデスメタルの音楽性についても探求し続けているバンドであります。もうすぐニューアルバムが出るということなのでHorrendousがどう進化あるいは深化しているのか楽しみです。

 
 

■ Morbus Chron

 

11年 1st「Sleepers in the Rift」
14年 2nd「Sweven」

 
ついこの間、映画「ジョーカー」を見ました。10分で気が滅入りました。でも何度でも見たくなるような映画ですね。まぁ、映画の内容は置いといて、作中で主人公のジョーカーというかアーサーが言ったセリフが忘れられなくてですね、ネタバレにはならないだろうから思い出して書くと

「面白い事を思いついたんだ。君には理解できないだろうけど」

 
あぁ、Morbus Chronの事だ。そうだよ。理解できないよ。誰得なアルバムなんだよ。誰に向けたメッセージなんだ。自身か、メンバーか、ファンになのか、同胞に向けてか、デスメタルに対してか、メインストリームか、アンダーグラウンドにか、大手Century Mediaに移籍して何を訴えたかったのか。

Entombedフォロワータイプのデスメタルとしてデビュー。デモやEPそして1stアルバム「Sleepers in the Rift」でシーンを盛り上げたバンドでしたが、Century Mediaに移籍後アヴァンギャルドでサイケデリックな方向にチェンジ。2ndアルバム「Sweven」はキャッチーな要素はほとんどありません。本当にアヴァンギャルドなアルバムなので諸手を挙げてオススメはできないです。しかし、結果論だろうけどこのアルバムによってシーンに対し何かのスイッチが「カチッ」と入った気がする。バンドは翌2015年に解散。

が、なんとこの話には続きが。

中心人物Robert Andersson氏によるニューバンド、その名もSweven。相変わらず実験性の強い作品ですがスゴク良いかも。Tribulation, Chapel of Diseaseが好きな方にオススメ。

 
 

■ Miasmal

 
 

11年 1st「Miasmal」
14年 2nd「Cursed Redeemer」
16年 3rd「Tides of Omniscience」

ワタクシ、最初アメリカのバンドとか書いて思いっきり恥をかきました。すみません。スウェーデン出身のクラストデスメタルです。端的に言うと10年代リバイバル第一世代でムーヴメントの切っ掛けを作ったバンド。このMiasmalで10年代若手デスメタルに興味を持った人も多いかと思います。デモ、EP、1stアルバムまではEntombedの影響が濃いというかそれを売りにしてた部分がありますが、2ndアルバム「Cursed Redeemer」からEntombed的な部分をあっさりカット。クラスト的なサウンドも徐々にカット。恐らくですけど、この方向チェンジによって昔からのファンは離れたと思う。しかし、アルバムの良し悪しは別としてMiasmalがMiasmalとして無二の存在になったのも確か。

最近Miasmalの話を聞かなくなりましたが、活動はしているようです。そろそろ次のアルバムが聴きたいですね。今年は無理かもしれないけど期待しておきましょう!

 
 

■ Temple of Void

 

14年 1st「Of Terror and the Supernatural」
17年 2nd「Lords of Death」

ニューアメリカンゴシックTemple of Void。僕の超オススメバンドです。サウンドはよくフィンランドのHooded Menaceと比較されます。僕が感じた限りではその根源はParadise Lostだと思う。PLの「Shades of God」及び「Icon」を3倍激重にしたようなデスメタルです。耽美性あるデスドゥームとして注目された1st「Of Terror and the Supernatural」次にコマーシャル的にならずヘヴィネスを追求した「Lords of Death」共に甲乙つけがたいアルバムです。最近海外の有力紙Decibel MagazineやKerrang!でもプッシュされ始めたのでヤバいでっせ。
更にもうすぐ3rdアルバム「The World that Was」がリリースされます。僕は発売されるまで聴きませんが、音源は貼っときますのでよかったら聴いてみてください。

20年 3rd「The World that Was」ジャケからして名作の予感。

 
 

■ Zealotry

  

13年 1st「The Charnel Expanse」
16年 2nd「The Last Witness」
18年 3rd「At the Nexus of All Stillborn Worlds」

アメリカのアヴァンギャルド・テクニカルデスメタル。Demilich, Gorgutsの影響下にある音楽性でデビュー。1stアルバム「The Charnel Expanse」はドゥームデスとしても聴ける名作。変化があったのはやはり2ndアルバム「The Last Witness」から。トリッキーなリフによるアヴァンギャルド性は前作同様ですが、メロディや大胆なストリングス導入によって曲構成に抒情性を持たせることに成功。実験性あるプログレッシブデスとして大きな成長の跡が見られます。3rdアルバム「At the Nexus of All Stillborn Worlds」になると更に前衛的になる。もうなんというかフリージャズの即興演奏感すら漂う。かと思ってたら歌劇的クワイアの導入などもうわけがわからない。最高です。

最近どうなってるのかなと調べたらなんと、先日記載した期待の若手デスメタルCalcemiaとGarroted両バンドのギターが加入していてビックリ。今年(20年)はEPをリリースする予定だそうなのでスゴク楽しみ。

 
 

■ Venenum

 

11年 EP「Venenum」
17年 1st「Trance of Death」

Hellish Crossfireのメンバー在籍のドイツのデスメタル。ドイツらしいイーヴィルな音楽性と荘厳な雰囲気を併せ持つEP「Venenum」デビュー。僕もこの耽美的で血沸き肉躍る音楽性に魅了されたが、しばらく音沙汰がなく解散したかなと思ってた矢先、1stアルバム「Trance of Death」をリリース。「ワレ生きとったんかー」と驚いたが、もっと驚かせたのはそのアルバムの音楽性。勇猛な基幹部分は変わっていないけど邪悪的なものは後退し、よりプログレッシブなバンドへ変化。あくまでデスメタルですが、Chapel of DiseaseやTribulationが好きな方にもオススメします。
 
 

■ Sulphur Aeon

  

13年 1st「Swallowed by the Ocean’s Tide」
15年 2nd「Gateway to the Antisphere」
18年 3rd「The Scythe of Cosmic Chaos」

圧倒的。圧倒的ではないか!大事なことなのでアレ。

少し今までのバンドとは毛色が違いますね。90年代から続くデスメタルの正統的進化の道を歩む、正に王道と言えるデスメタル。そしてそのスケールのでかい音楽性はMobid Angel、Vader、Behemothなどと同系列で語れるほどの実力を持ち合わせています。特に2ndアルバム「Gateway to the Antisphere」で完全に門が開いた感がありますね。3rdアルバム「The Scythe of Cosmic Chaos」も同等に好き。気絶するかと思った。また、クトゥルフ神話を題材にしたジャケも圧倒的に強い。
ただ、聴くときは部屋の灯りを絶やさないように。

 
 

■ Suffering Hour

  

14年 EP「Foreseeing Exemptions to a Dismal Beyond」
17年 1st「In Passing Ascension」
19年 EP「Dwell」

17年作の1stアルバム「In Passing Ascension」で一躍有名になった脅威の新人。今のスタイルはブラッケンドデスメタルですけどデビューEP時はスラッシュメタルに近い音楽性でした。その時から個性があり、僕はVektorのような存在になると予想していましたが、1stアルバム「In Passing Ascension」で僕の予想は大きく外れてしまった。もちろん良い意味でさ。Vektorのようになると思った根拠に変幻自在なスタイルが挙げられるがその奇抜性がブラックメタルの方へ向いたらとんでもないことになった。19年作のEP「Dwell」では貫禄さえ感じるほどさ。このバンドはもっと大きくなるで。

 
 

■ 総評

10年代リバイバルあるいはムーヴメントと一括りで語られることが多くなりましたが、多くのバンドが10年代初期と後期では音楽性が大きく変わっています。進化あるいは深化、もしかしたら退化かもしれませんが、90年代初期デスメタルより30年、その根源が現行シーンへと受け継がれ激動している社会と共にデスメタルとしてどう「変化」しているかを楽しんだ10年でした。日本には諸行無常、盛者必衰なんて言葉がありますので、今後はどうなるかわかりませんけどデスメタルの変化は絶対に止まらない。僕はこれからもデスメタルの変化を追って行こうかと思っています。

 
 

14.「Blood Incantation」~10年代デスメタルの奇跡~

 

 
無限に広がる宇宙において地球のような惑星が生まれ、更に生命が誕生する確率は「10の4万乗分の1」だそうです。この確率がどれほどのものか例えると「プールの中に分解した時計を入れて水流だけで元通りに組み上がる」位の確率なんですって。よって学者の中には地球の存在は奇跡であり地球以外に知的生命体は存在しないという説を唱える人もいるとか。
…フフっ。その説は完全に否定されてしまいましたね。論破ですよ。

そう、この Blood Incantation によってだ!

 
  

15年EP「Interdimensional Extinction」
16年1st「Starspawn」
19年2nd「Hidden History of the Human Race」

ご存知の通り昨年(19年)Blood Incantationの2ndアルバム「Hidden History of the Human Race」が大ヒット。マニアから大手メディアまで、さらにOSDMどころか普段デスメタルを聴いているのかわからないような人たちからも絶賛の嵐。何故か? 作品がデスメタル的に素晴らしいことは間違いない。プログレ的視点からでも素晴らしい作品ではなかろうか。だけどここまで話題性が広がった理由は正直わからない。わからないけど、僕はこの10年間に起こったことの積み重ねがこのブレイクに繋がったと考えます。

若手OSDMの台頭から、ベテランの活躍、復活、ムーヴメントからリバイバル定着、Horrendous、Morbus Chron、Miasmal、Tribulation等のブレイクからの変革、Dark Descent Recordsなどのインディーレーベル、Century Media等の大手の役割、BANDCAMPの存在、サブスクリプションの普及、メインストリーム、アンダーグラウンドの在り方、社会認識の変化、カウンターカルチャーの逆転現象、SNSでの繋がり、そして10年代終わりという節目等、小さいなことから大きなことまで、それが偶然であれ必然であれ、あらゆる出来事が重なり流れ着いた先にBlood Incantationの存在があったのではないか。それこそ奇跡的な確率で。

ただ一つ。地球と生命が単に確率によって生まれたのか、生まれるべくして生まれたのかはわからないが、生命は偉大であり、尊くかけがえのないもの。

Blood Incantationの存在もまた然り。

 
 

おわりに

ということで、今回でこのコーナーは終りです。
当初は3回位で終わると思って気軽に始めましたが結局3か月かかってしましました。10年という年月はあっという間に過ぎ去っていきましたが、振り返るとその重みを実感しました。一応完結したけれど反省するところは沢山あります。まず、まとまりがなさすぎる。国別だったり、サブジャンル別だったり、ネタ的だったりと。思い切って年ごとの時系列順に気に入ったアルバムを紹介した方が分かりやすかったかもしれない。なので大幅な修正が必要かなと思っています。

で、このブログをどうするか。再開してみるとやっぱり寝不足になったり、焦ったり不安になったりと大変でした。せっかく再開したで、今後は気まぐれに記事を書こうかと思っています。

あと、ブログを書きながら思ったことを一つ。
僕もメタル人口を増やそうとメタルの入り口にはアレがいいとか、デスメタルに興味を持った方にはコレがいいとか書いたりしたけど、もうBlood IncantationやSpectral Voiceからメタルに入ってもいいじゃないかと。そういう時代が来たら面白いかなと思いました。
僕はHorrendous推しだけどな!

 
 
 

New Age of Death Metal Part9

2020年3月14日

 
どうもどうも。アナログです。こんにちは。
本日も「New Age of Death Metal」と題して2010年代を振り返り「リバイバルムーブメント」を再考する。さらに、次の10年に向けて期待のバンドもピックアップしようというコーナーです。

 
さて、もう3月も上旬が過ぎ去ろうかという時期。新譜もどんどん出ているので、そろそろこのコーナーを終わりにしないとですね。なので駆け足でまとめに入ろうかと思います。今回はOSDMの話ではなく音楽性の変化についての話です。まずは「デススラッシュ/ブラッケンドデス」で印象に残った3バンドをピックアップしてみました。「10年代の音楽性の変化」についてはこのコーナーのテーマの一つだったと思います。

 

13.「変身をするたびにパワーがはるかに増す・・・その意味がわかるな?」

自分の中ではデススラッシュ/ブラッケンドデスの系譜と言ったらまずドイツが思い浮かぶかな。日本でもお馴染みのDestruction, Sodom, Kreator をルーツとしてDesaster, Nocturnal, Hellish Crossfire, Cruel Force, ドイツ以外にもAura Noir, Nifelheim, Deströyer 666など数多くのバンドが80、90、00年と世代をまたがりイーヴィルな世界観を築きあげてきました。しかし、10年代中盤になると若手有望株バンドの一部に変化が…… 
ということで、僕が選んだ10年代デススラッシュ/ブラッケンドデスはこの3バンド。

左から Ketzer, Tribulation, Chapel of Disease
「あいたたた~」と思った方もいるでしょうが、僕の脳髄にはこの3バンドが刻み込まれてしまったのだから仕方ないのです。え~まずは、Tribulationからです。

 

1.Tribulation

 

09年 1st「The Horror」★オススメ
13年 2nd「The Formulas of Death」

スウェーデン出身のデススラッシュ。00年代初頭に正当派スラッシュHazardとして活動し、04年にバンド名をTribulationに改名し音楽性もホラーを題材としたデススラッシュへと変更。09年1stアルバム「The Horror」をリリース。ジャーマンスラッシュの影響下にあるイーヴィル性とHM-2スウェデスの暴虐性を取り入れたハイブリットデススラッシュ。まだ、さざなみ程度のOSDMリバイバル期に現れた若手として注目されました。しかし、次作「The Formulas of Death」で早くも方向性に変化が現れるのです。暴虐性より抒情性を重要視し、それに合わせたメロディアスな曲展開がファンの評価を二分しました。けれど、どちらかというと多くの人に受け入れられ新たなファンも獲得したのではないでしょうか。

 
 

 
15年 3rd「The Children of the Night」
18年 4th「Down Below」★オススメ

Century Mediaへ移籍してからの2作品。
聴けば聴くほど良くなるけど、当時の感想は「カッコイイけど何かイラつくな~」みたいな複雑な感じだったかな。簡単に言うならブラッケンドゴシック。2ndアルバム時にはその片鱗が垣間見えていたけど、ここまで思い切るとは想像できませんでした。実際どれくらい売れたのかはわかりませんが、他のバンドが方向性を変えた時「Tribulation化」したと言えば大体の音楽性が想像できる程に影響力を持つようになったと思う。サブジャンル化したと言ってもいいかな。
それにしてもTribulationの先見性はスゴイ。00年代のスラッシュリバイバルが盛り上がってた時にデススラッシュに転向し、OSDMが盛り上がって来たときにはブラッケンドゴシックに転向。1歩先を行ってる感じです。あと何回変身を残しているのでしょうか。楽しみです。

 
 

2.Chapel of Disease

 

12年 1st「Summoning Black Gods」
15年 2nd「The Mysterious Ways of Repetitive Art」

今回紹介する3バンドの中ではかなり地味な存在。誰?と思う人もいると思う。元Infernäl Deathというブラックスラッシュのメンバーが結成したデスメタル。デビュー時はOSDMよりのサウンドでしたが15年2ndで音楽性の幅を広げる。イントロから壮大な物語が始まる予感をさせてくれたが、今にして思えばそのイントロはこのアルバムだけではなく次作への布石だったように思います。

 

18年3rd「.​.​.​And As We Have Seen The Storm, We Have Embraced The Eye」★オススメ

秒でポチッた。先行で公開された曲聴いて眠れなくなるし。もう大好き過ぎて毎日聴いていたしアナログメタルが18年度ベストを選んでいたらこのアルバムがNo1だったかもしれない。

このアルバムで「Tribulation化」したと言えば話が早いけど、内容はポスト・デス&ロール化したといえる。繊細でエモーショナルな旋律を勇猛なエピック感で融合するという一見無謀というか相反する表現を見事に一体化したアルバムです。実験要素もあるけれど奇抜性あるいは過剰な音響が前に出ることは無く、あくまで楽曲で真っ向勝負している姿勢が素晴らしい。音作りにしても最小限のディストーションサウンドでも最高にエクストリームだと感じたし、演奏が上手い事もわかりました。未知なる高揚感、領域がまだあることを証明してみせた作品です。ちなみに次に紹介するKetzerのメンバーもChapel Of Disease推しのようです。激オススメだ!

 
 

3.Ketzer

 

09年 1st「Satan’s Boundaries Unchained」
12年 2nd「Endzeit Metropolis」★オススメ

「Satan’s Boundaries Unchained」で一気に世界にその名を馳せた衝撃のデビュー作。ジャケ、容姿、もちろん曲もそうですが全てがカッコイイ。Destruction, Sodom, Kreator のキャッチー性からDesaster, Deströyer 666等のイーヴィル性を凝縮したブラッケンドスラッシュの名盤。続いて発表された2ndアルバム「Endzeit Metropolis」では泣きのメロディ、緩急ある曲展開など詩的になりジャケを眺めながら聴くと頭の中で色々なストーリーが展開されていく。僕はこのアルバムをオススメします。

 
 

16年 3rd「Starless」
19年 4th「Cloud Collider」★オススメ

ブラッケンドスラッシュの新星として人気を経て、更に大手レコード会社METAL BLADEへ移籍し順風満帆のストーリーを歩んでいたかのように思われていたバンドにいったい何が。と多くのファンは思ったに違いありません。
問題作「Starless」それまで培ったブラッケンドスラッシュな音楽性は影を潜め、より実験的なアルバムに仕上げた作品。比較対象として先に脱デスメタル化したTribulationがあげられますが、このアルバムはTribulationほどキャッチーでもゴシック調でもありません。当時は賛否両論というか否定的な意見の方が圧倒的に多かったです。無機質的な冷たさはあれど結構エモーショナルに感じられとても良いアルバムだと僕は思いますが。続いて4thアルバム「Cloud Collider」多少古典的なメタルサウンドに戻したとはいえ前作の実験性は生かされ、それまでのブラッケンドスラッシュとは一線を画する作品です。

Ketzer:ドイツ語で「異端」という意味です。
「Starless」発表後のインタービューを読むと、このバンド名の重要性は本人らが一番理解していて、現状のメタルシーン、自分たちの立場、ファンの求めるもの、賛否が分かれることも覚悟で、METAL BLADEもデモを聴いた上ですべての決定権をKetzerに委ねた形で作られたアルバムだったことがわかります。また、ベーシストのDavid Gruberはこうも言ってます。「私にとって優れたロックバンドはみな自分たちの限界を押し広げようとしている」

どの時代にも音楽性の変化させたバンドはいます。しかし、この言葉の重さは10年代のバンドにとって、言わば強制的にリバイバルの呪縛に囚われたバンド達にとって最大のテーマだったのではないかと。

次回へつづく

 
 

New Age of Death Metal Part8

2020年3月7日

 
どうもどうも。アナログです。こんにちは。
本日も「New Age of Death Metal」と題して2010年代を振り返り「リバイバルムーブメント」を再考する。さらに、次の10年に向けて期待のバンドもピックアップしようというコーナーです。

 
「怖いな~怖いな~、いやだな~、怖いな~」
本日は出来れば触れたくないテーマ「ドゥームメタル」です。というのも、ご存知の通りドゥームメタルはBlack Sabbathを始祖として、エピック、ストーナー、スラッジ、フューネラル、ゴシック、そしてデスドゥーム、他諸々と細分化されていて、それぞれファンによる信仰具合も半端ない。「ドゥーム好きだよ」なんて気軽に言ったら全方向からフルボッコにされるわけで、ドゥームを制する者はアンダーグラウンドを制するとも言われてるくらいだからね。まぁ嘘なんですけど。

 

12.「ドゥームの片隅から」

2010年代OSDMリバイバルの高まりと共に台頭してきたのが、Spectral Voiceに代表されるRawな「ドゥームデス」です。
今日までのドゥームデスの流れを大雑把に振り返ると、Celtic FrostからAsphyx, Autopsy, Obituaryを始まりとして、現行の音楽性と近いルーツは90年代初期デスdiSEMBOWELMENT, WINTER, Cianideあたりでしょう。その後00年代はIncantation, Funebrarumの暗黒性、ムーブメントの先駆けCoffins、フューネラルドゥームの代表格Evokenの神秘性を経て、10年代初頭にHooded Menace, Anhedonist, Kryptsなどリバイバル世代が地を固め、中盤以降にTemple of Void, Spectral Voice, Fetid等で爆発 しろ した感じでしょうか。実際の背景はもっと複雑でしょうけど。

 
diSEMBOWELMENT, そしてフューネラルドゥームEvoken

ヨシ!イイ感じに盛り上がて来たけど、この流れの続きはもうやってしまったような気がする……内容的には『PART5』のRAWデスメタル特集と被ってしまう。無計画で更新しているのですみません。いつか全部修正しよう。

ということで、今回はドゥームはドゥームでも「誰も話題にしていないけど俺の心にはしっかりと響いたぜ!」をテーマに10年代ドゥームデスを振り返ります。願わくは20年代も活躍して欲しいバンド達です。

 
 
 

DWELL:
15年EP「Vermin And Ashes」★オススメ
17年EP「Desolation Psalms」★オススメ

デンマーク出身のブラッケンド・ゴシック・ドゥームデス。残念ながら解散してしまった。フューネラル一歩手前の絶望的な荒廃感、虚無感、願い。そして救済への一縷の音色。「尊い」とはこのDWELLにこそ相応しい。今も、そしてこれからも聴き続けるであろう一枚です。次の17年作のEP「Desolation Psalms」も素晴らしい出来でした。BANDCAMPに音源はありませんでしたが機会があれば是非聴いて欲しいです。

 
 
  
 

God Disease:
14年EP「Abyss Cathedral」★オススメ
16年EP「Rebirth of Horror」★オススメ
19年1st「Drifting Towards Inevitable Death」★オススメ
19年EP「Hymns For Human Extinction」★オススメ

僕のブログを読んでいる人にはお馴染みのバンド。もう何度も何度もしつこいくらい紹介してます。でもまだ知らないよと言う方のために改めて紹介しよう!フィンランドはヘルシンキ出身のゴシックドゥームデスGod Diseaseだ!14年のEP「Abyss Cathedral」を聴いて以来完璧に信者になってしまった。一時期メンバーも音楽性も安定せず、ダメかと思ったけど近年は良作を連発。上質なゴシックドゥームデスを聴かせてくれる。初期Peacevilleレコードのバンドが好きな方にオススメです。

 
 
  

Womb:17年「Devotion To The Sea」★オススメ
スペインのアトモスフェリック・ドゥームデス。これはいいものだ。ゴシックメタルに通じる退廃的で耽美な世界観が心地よい。上記のGod Diseaseを更にメロディアスにしたようなサウンド。まだ垢ぬけていない感じはするけれど洗練されていない分余計にメロディの良さが際立つ良盤です。

Obed Marsh:16年「Innsmouth」
陰気で荒廃した港町インスマウスでの恐怖体験。底へと沈み込む冷寒なメロディとデプレッシブな狂気が錯綜するクトゥルフ・ブラッケンドドゥーム。次作「Dunwich」では更なる狂気が待ち受けている。人間性の限界に興味がある方どうぞ。オススメはしないコポ。

Gravewards:17年EP「Subconscious Lobotomy」
ギリシャのデスメタル。血沸き肉躍るイントロだけでご飯3杯いけますね。どことなくBolt Throwerを彷彿させる音楽性にギリシャのエピック要素が加わった熱いサウンド。ただカッコイイけど曲展開が乏しく退屈になってくるかも。オススメはしないけど何故か強烈な印象を残しました。

 
 
 

Mortals:14年「Cursed to See the Future」★オススメ
アメリカ出身ブラッケンドスラッジ。この才能がうらやましい。一曲目で例えると、チューニングあるいはピッチを外しているかのような不協和音が気になって落ち着かない。だがこの不協和音は伏線であり、ナノマシーンが傷を自己修復していくように曲が進み、最高潮に達した時完全なる姿を現す。この独自の高揚感は何ものにも代え難い。芸術的といってもいい。ただ現在活動しているのか不明です。

 
 
  

 

Asphodelus:
14年EP「Towards the Gates」(Cemetery Fog)
16年EP「Dying Beauty & the Silent Sky」
17年デモ「The Veil Between the Worlds」★オススメ
19年1st「Stygian Dreams」★オススメ

最後は、これでもかというくらいに無駄に推し続けているフィンランドのゴシックドゥームAsphodelus。改名前のCemetery Fog時代から僕の心に刺さるものを持っていましたが客観的に見れば突っ込みどころ満載のバンドでした。17年のデモ「The Veil Between the Worlds」を聴いたときはどえらく成長していて涙出そうでした。20年代もAsphodelusを推していきます!

 

~Doom Bloody Doom~

折角なのでここからは、デスメタルから一旦離れてロックとかオカルト的なものをルーツとしたドゥームを振り返ろうと思います。
といっても、10年代はデスドゥームとは比較にならないほどドゥームバンドが登場して、デスメタルと並行して追うことはできませんでした。中途半端ですがそれでも10年代印象に残ったバンド、僕的にオススメなバンドを紹介したいと思います。

 
  

Devil's Blood:11年「The Thousandfold Epicentre」
オランダのハードロック。70年代回帰のバンドがメチャクチャ流行ったけど、このDevil's Bloodの哀愁感漂うサウンドは忘れることはないだろう。

Mansion:15年EP「Altar Sermon」
フィンランドのカルト教団ドゥーム。セラピーに飢えてる方、アルマ様までご連絡を。

Bathsheba:17年「SERVUS」
ベルギー出身。強烈な激重ドゥームでいながら妖艶。解散はもったいなすぎる。ちなみにボーカルはMichelle Noconさん。現在はOf Blood and Mercuryで活躍中。

 
  

Jess and the Ancient Ones:15年「Second Psychedelic Coming: The Aquarius Tapes」
Shocking Blue感漂うサイケデリックロック。70年代回帰のバンドの中では演奏レベルが非常に高くプログレ的ですがキャッチーでよいです。

GOLD:17年「Optimist」
日本ではまだ無名ですけど、世界ではポストバンク、ポストメタルとして徐々にその名は高まってきてます。

He Whose Ox is Gored:14年「Rumors 7"」
ジャンルはわからない。ポストメタル?ニュースクールなサイケロック?一糸乱れぬ弦楽リズム隊に浮遊感あるシンセ音が重なり合う実験的で先進的なサウンドスケープ。

 
  

BLACK LUNG:16年「See The Enemy」
世に対して怒りが黒く渦巻く激渋ダウナーブルース&ドゥーム(ノイズ付き)。ウォームな重さとリッケンバッカーによるソリッドな響きの組み合わせが最高。ボーカルも上手い。最近ソリッド担当のギターがやめてしまいました。新しいギターは正確無比のテクニカルマンで前任とは真逆の存在。新生BLACK LUNGが楽しみ。

Cambrian Explosion:16年「The Moon EP」
さあ、無限に爛々だ。いつまでも、どこまでも、永遠に聴けそうなプログレッシブ・サイケデリックロック。最高にカッコいいね。アメリカのバンドですけど、よく聴くと日本語で歌っているんですよ。

Spaceslug:19年「4 Way Split」
ポーランド出身のストーナーバンド。90年代シアトルの音景っぽさがあるダウナーサウンド。次から次へと精力的に音源をリリースし、しかもリリースする度に良くなっていく。でもリリースが多すぎて付いていけなくなってきた。フィジカル好きは大変です。

 
BANDCAMPの音源貼りすぎてブログが重いさ。ドゥームだけに……
以上、ドゥームの片隅からでした。

 
 
 

New Age of Death Metal Part7

2020年2月29日


 

どうもどうも。アナログです。こんにちは。
本日も「New Age of Death Metal」と題して2010年代を振り返り「リバイバルムーブメント」を再考する。さらに、次の10年に向けて期待のバンドもピックアップしようというコーナーです。

 

10.「地球人だけじゃスペースがもったいない」~コズミックデス & テクニカルデス~

2010年代OSDMリバイバルムーブメントの中ででロウ・デスメタル、ドゥームデスと共に人気を博したのがコズミックデスとかSci-Fiデスとか言われる宇宙を題材にしたデスメタルでした。
その筆頭は言うまでもなくBlood Incantation。で、他にはいるの?
います。メチャクチャいますとも。10年代コズミックデス貼っていきましょう!

が、何をもってコズミックなのかは明確な基準はありません。なので、ここでは僕基準でコズミックデスとテクニカルデスだと感じたバンドをピックアップします。
宇宙の深淵をのぞくものは深淵をのぞいているのだ。

 
  
RAW感のある「Timeghoul」テクニカルな「DEATH, Cynic, Nocturnus, Atheist, Pestilence」アバンギャルドな「Demilichi」コズミックではないのもあるけど、この辺の初期デスを押さえておけばヨシ! もちろん押さえてなくてもいいです。後から聴いても楽しめます。

 

   

Fractal Entropy:16年「Transcendens」★オススメ
DEATH, Cynic, Atheistタイプのテクニカルデス。メキシコのド・マイナーバンドですけどカッコ良し。メランコリックかつスラッシーなリフにタイトでキレのあるドラム。最後まで気持ち良く聴ける好盤。

Ecocide:13年「Eye of Wicked Sight」★オススメ
コズミックなジャケがナイス。内容はホラーコズミック。Demigodが近いかな。SF感は薄いがOSDM感満載のサウンドです。一度解散、すぐに再結成したけどOSDM感は無くなり別物になってしまった。僕的には残念。

Boethiah:18年EP「Celestial Gateway」
ボエシア。RPG「エルダースクロール(TES)」の神の名です。ということでバンド結成時はTESメタルでしたが今はSci-Fiデスに転向。ちょいTimeghoul~ちょいBolt Throwerって感じです。

 
   

Nucleus:16年「Sentient」★オススメ
TimeghoulにDemilichiのアヴァンギャルドな跳躍感を混合させたようなサウンド。それ最強じゃね。ええ、最強ですね。ジャケもDan Seagrave氏ですし。ただ昨年19年に発表した2ndアルバム「Entity」の出来が今一つだと感じました。20年代に期待!

Cosmic Atrophy:18年「The Void Engineers」
マニアの間で話題のChthe’ilistの中心人物でありFunebrarumのギターでもあるPhil Tougas氏が加入。Sci-FiなChthe’ilistという感じのサウンドでロウとはまた違うダークな雰囲気。予想の斜め上を行く独自のメロディセンスが好き嫌いを分けるかも。

Teleport:16年EP「Ascendance」★オススメ
スロべニアのコズミックデス。ブラッケンドスラッシュを主体としつつアヴァンギャル性やクリーンのギター導入部はGorgutsを彷彿させる。全体的にOSDM的なのりだけど現代的にリバイバルされたサウンドは一聴の価値あり。最近ノルウェーのEdged Circle Productionsからデモを出すなど20年代大いに期待できるバンドです。

 
  

Miscreance:18年デモ「From Awareness to Creation」★オススメ
イタリアのテクニカルデス。このバンドはコズミックではありませんし、そもそもスラッシュメタルのような気がしてきたけどDEATH, Nocturnus, Atheist的なテクニカル志向を感じ取ったのでここで紹介です。2013年結成と恐らくメンバーも若いかと思われますが安定した演奏力、ドラマ性のある楽曲も魅力的。僕のお気に入りバンド。

Plague Rider:15年EP「Paroxysm」★オススメ
イギリス出身のテクニカルデス。エクスペリメンタルデスとも呼ばれているだけあってOSDM枠に留まらない音楽性を醸し出している。13年に1st「Plague Rider」18年にEP「Rhizome」をリリースしています。徐々に洗練されてきている印象なのでこれは次あたりのアルバムでブレイクするのでは。楽しみです。

AZOOMA:16年「The Act of Eye」★オススメ
イラン出身のテクニカルデス。国籍に偏見とかもっているつもりはないが「えっイランのデスメタル!?」とビックリしました。逆に言えば、世界のバンドに引けを取らないほどクオリティの高いアルバムだということだと思います。腕も確かだしプログレッシブな展開も良し。Atheist, Pestilence, CynicからOpethファンにもオススメです。

 
 

11.New Generation Cosmic Death Metal

宇宙は無限の可能性を秘めている。コズミックデスメタルだってそうさ。OSDMだけではスペースがもったいない!
そこでOSDM的ではないコズミック&テクニカルデスメタルをピックアップ。OSDM枠を無くすとキリがなくなるし、僕自身追いきれないけど一OSDMファンの目線から見た他のシーンで印象に残ったコズミックバンドを選びました。

 
   

Artificial Brain:17年「Infrared Horizon」★オススメ
Gorgutsフォロワーの一つに数えられるがこのアルバムはGorgutsより全然聴きやすい。確かにアヴァンギャルドですけどメロディもスピード感もあり難関な部分を和らげています。デスメタルとして現在進行形で進化しているバンドの一つだと思いました。

Inanna:12年「Transfigured In A Thousand Delusions」★オススメ
チリ出身のテクニカルデス。クラスの好きな人から「オススメのバンド教えて」と聞かれたらInannaと言うのだ!疑うな完璧な展開がまっているはず。それはさておき、何でしょうこの燃えるようなカッコ良さは。Emperorの高揚感をVektor的なテクニカルデスに落とし込んだような楽曲。分刻みで展開する楽曲、透明度のあるブルータルサウンド、カオティックなテンションにマスロック的ギターソロなど先進的で実験性溢れたサウンドに時代がついてこれなかった隠れた名盤。とにかく聴いてとしかいえない。激オススメな一枚!

Obscura:16年「Akróasis」★オススメ
僕はほぼOSDMしか追っていないけど他のデスメタルシーンの10年代に目を向けた時、真っ先に目に入るバンドがObscur。Beyond Creationと共に10年代を代表するテクニカルデスメタルだと思います。どちらが好きかというとCynic感があるObscurが好きですね。

 
  

Psychopress:19年「The Möbius Strip」★オススメ
台湾のテクニカルデスメタル。このバンドもDEATH, Cynic, Nocturnus, Atheistあたりの影響を感じさせながらOSDMの枠に留まらない先進性を重要視したバンドです。静と動のコントラストが激しくも美しい。今後が楽しみなバンドです。

Madrost:17年「The Essence of Time Matches No Flesh」
カリフォルニア出身のデス・スラッシュ。Vektorを彷彿させるコズミック感ありのスラッシュメタル。Vektorほどではないけどイイ感じにプログレしてます。基軸は激烈なスラッシュですが時々、はっと息を呑むほどドラマチックに展開します。なかなかおすすめ。

Vektor:16年「Terminal Redux」★オススメ
10年代コズミックアルバムで絶対外せないのがこの「Terminal Redux」。デスメタルじゃないけど、もう関係ないよね。僕があと何年メタルを聴いているかわからないけど、これ程驚かせてくれたスラッシュメタルは果たして出てくるのであろうか。このアルバムを超えられる存在はVektorしかいないと思うが、肝心のVektorが活動停止してしまった。20年代は絶対復活して欲しい。歴史的名盤。

 
 
OSDMリバイバルが盛況の中、Blood Incantationが起爆剤となりコズミックデスメタルも注目されつつある現在ですが「正直Blood Incantationの良さが分からないよ」という方もいると思う。わかります。僕も世界で人気でも良さがわからないバンドは結構いますもの。その話は結局は自身の環境、バンドを好きになる過程、あるいは価値観を構築する過程の話になってしまうので、誰の目を気にすることなく、他人の顔色をうかがわず、好きな音楽を自分なりに追って行くのが健全だと思います。

結論。コズミックデス & テクニカルデスにハズレ無し!
ということで、コズミックデス & テクニカルデス編でした。
それではまた次回。お楽しみに。